保育の学び

「ヒヤリハット」から学ぶ危険性

 保育中はどんなに気をつけていても、子どもたちのトラブルやヒヤッとした場面に出くわすことがあります。子どもたちを一日預り、無事に保護者の方へ返すことは当たり前のようで、とても難しいことですよね。

 ここでは実際に起きたヒヤリハットから危険性を学び、どのように対応したらよかったのか、ヒヤリハットを起こさないようにするための工夫などをお教えいたします。

目次
ヒヤリハットとは?
保育中のヒヤリハットは様々な場面で起こる
実際の事例から危険性を考える
ヒヤリハットを起こさないようにするには?
まとめ

ヒヤリハットとは?

 保育現場でよく耳にする「ヒヤリハット」とは、重大な事故や怪我とまではいかないものの危険を感じヒヤッとしたり、ハッとした事象のことをさします。
保育現場では思わぬところで事故や怪我が起きるので、未然に防ぐためにも保育士同士や園全体でしっかりと対策を取ることが必要となってくるのです。

子保育中のヒヤリハットは様々な場面で起こる

 保育中のヒヤリハットは主に
食事中
睡眠中
自由遊び中
など、様々な場面に潜んでいます。

 それぞれの場面でどのような危険が考えられるのかや、実際にヒヤリハットが起きてしまった時の対応をどうしたら良いのか事前に知識を得ておくことが大事です。

ボールを取り合う子ども

実際の実例から危険性を考える

 様々な場面で起きるヒヤリハットは、実際に起きた事例を見て「どうするべきだったのか」「事前に危険を回避することができなかったのか」などを考えると良いでしょう。考えたことを自分たちの保育に反映していくことで、ヒヤリハットの発生の可能性を下げることができます。ここからは、実際に起きた事例を踏まえながら対応策を考えていきましょう。

事例1【食事シーン】

 卵アレルギーのある3歳の男の子。給食時は他の園児と少し離れたところで食事を摂っていたが、近くにいたアレルギー担当の保育士が他の園児の対応をしている間に「おかわりをする!」と言うので他の保育士が対応した。対応した保育士は新任で、男の子のアレルギーを把握しておらず、卵の入った給食をおかわりとして渡し、それを食べた男の子に蕁麻疹が出て病院を受診することとなった。

どう対応するべきだったか?
給食時のアレルギー児の誤食はヒヤリハットでも多い事案です。
この場合の対策としては、

保育士同士でアレルギー児のアレルギーをしっかりと把握する(〇〇くん、アレルギーのため別メニューですなど大きな声で伝える)
給食時のアレルギー児担当の保育士は、その場から離れない
アレルギー児のおかわり分は、通常食と同じところに置かず、アレルギー児が食事しているテーブルに置く

以上のような対策をしておけば防げた案件です。
食事中は常にアレルギーのことを意識をして、保育士同士でも声を掛け合っていきましょう。

事例2【睡眠シーン】

 生後6ヶ月の男の子がお昼寝前にミルクを飲んでから午睡に入る。入眠し、30分経った後うつ伏せの状態で心肺停止になっているのを保育士が発見、その後亡くなりました。吐いたミルクの誤飲による窒息の可能性が高いとのことで園内に監査が入りました。

どう対応するべきだったか?
実際に亡くなってしまった悲しい事案ですが、保育現場での死亡事故の7割は睡眠中に起きています。それほど睡眠中は子どもから目を離してはいけない、ということです。
この場合の対策としては

午睡前のミルク後のゲップは出来ていたのか保育士同士で確認する(出ていない場合は顔を横向きにさせる)
うつ伏せ寝は絶対にしない(SIDS予防も含め)
午睡中は5〜10分ごとの呼吸確認を徹底する

以上のような対策をしていたら防げた案件です。
午睡中の呼吸チェックは必須で、必ずチェック担当の保育士を一人でもつけるようにしましょう。

事例3【自由遊びシーン】

 4歳の男の子が自由遊びの時間に箸を使って豆をお皿に移動する「おはしあそび」を行っていた。自由遊び後、男の子が急に「耳が痛い」「右耳だけ聞こえない」と言い出し、保育士が確認したところ右耳に豆がすっぽりとはまっていた。取り出すことができず、耳鼻科で対応してもらい耳に詰まった豆を取り出した。

どう対応するべきだったか?
小さなものを耳や鼻に詰まらせて取れなくなるヒヤリハットも、保育現場ではよくあります。
このような場合は、

小さなものを使って遊ぶときは必ず保育士が近くで見守る
自由遊び時ではなく、目が行き届くクラス遊びの中でおはしあそびを提供する

以上のような対策をしていたら防げた案件です。
保育中は「こんなことするの?!」といったまさか…の連続です。子どものすることを予測して遊びの環境を整えてあげましょう。

事例4【散歩シーン】

 3歳児クラス計25名で散歩に出かけるため、園内の玄関で靴を履くなどの準備をしていた。担任保育士は全体を見て準備ができていることを確認、玄関前で整列させてから散歩に出かけたが、のちに玄関の端で1人残されていることが判明。保育士は気づかず散歩に出てしまい、園に残っていた他の保育士が残っている子を見つけた。

どう対応するべきだったか?
お散歩に出る時など、準備から出発までバタバタしてしまいますよね。そんな時こそヒヤリハットが起きやすい場面です。
このような場合は、

担任保育士は整列時にしっかり人数確認を行う
担任保育士以外の引率した保育士は玄関に誰もいないか最終確認をする
慌てず全体をゆっくり見てから次の行動に進む

以上のような対策をしていたら防げた案件です。
残されていた子に怪我がなかったのが不幸中の幸いですが、人数確認はしっかり行いましょう。

子どもと遊ぶ保育士

ヒヤリハットを起こさないようにするには?

 実際の事例を通して、ヒヤリハットの恐ろしさを改めて実感したのではないでしょうか。ヒヤリハットを起こさないようにするためにも、事例から考えた対策を自分の保育に活かすことが大事です。

保育士同士の声の掛け合いは必須

 保育現場で一番大事なのが、保育士同士の声かけです。ちょっとした確認も大きな声で共有することでヒヤリハットを防ぐことができます。普段から声がかけやすいような環境にしていくため、コミニュケーションを怠らないようにすることも大切ですよ。

危ない場所の確認を全員で共有する

 保育園内でヒヤリハットが起きそうな危ない場所を確認しておきましょう。園庭の遊具が古くなって危なくないか、保育室内の押し入れは子どもが開け閉めしにくくなっているか、ホールに子どもが隠れられるような死角がないかなど、子ども目線に立って危ない場所がないのか再確認し、保育士全員で共有しましょう。

色々な「もしも…」を想像して動く

 保育の現場にいると、目の前のことで忙しく全体を見る余裕がなくなることもあります。ですが、忙しく慌ただしい時こそヒヤリハットは起きやすいので、一呼吸置いて全体を見渡し「もしもこうなったら…」という想像をしながら動くことも大事です。常に「怪我や事故が起きるかもしれない」と気持ちの片隅に意識を置くことで危ない場面にいち早く気づくことができます。

まとめ

 保育中、どんなに気をつけていてもヒヤリハットは起きてしまうことがあります。最悪な事態にならないためにも、実際の事例からどうするべきだったのか考え、自分の行う保育ではどうしていけるかを考えていきましょう。

 子どもたちの安心安全な場所であるために、日々勉強していくことが大切です。