保育士のような仕事は感情労働と呼ぶことがあります。感情が動かされやすく、精神的に疲弊しやすくなります。単に感情的になりやすいだけでなく、保育の現場ではその自分の感情を上手くこどもに伝えることも必要になります。
このノートでは、まず自分の感情に気づくことを通して、こどもの理解や支援につなげていくことを考えます。
●感情に関心を向けよう
保育士はベテランになればなるほど、こどものどんな言動や態度にも動じなくなると思われるかもしれません。そしてそれが保育士としての成長であり、理想的な姿だと考えているかもしれません。
当然それは一面において真実です。何事にも動じない保育士は安心感を与えます。この人のそばにいれば安全だと思えれば、こどもはのびのびと成長できます。
しかし保育士が動じないことと、こどもの気持ちに無関心でいることとは違います。大人がこどもの気持ちに共鳴し、大人自身もまた感情的になることがなければ、こどもは自分の気持ちをわかってくれる人がおらず、適切な対人関係を築くことができなくなります。
重要なのは、こどもの感情に関心を向けるためには、大人自身の感情に目を向けなければならないことです。
●感情に気づくとはどういうことか
私たちは怒っていないと思っていても、周りから怒っていると思われることがあります。感情は主観的なものです。しかし、他者にとっても私の感情は重要です。私の感情は「私が思っているから正しい」ものではなく、私をとりまく他者と理解しあうなかで、「私はこう感じている」と深めていくものです。
反対に「あなたがどう思っているか」だけを気にしていても、自分の感情に気づくことはありえません。
一般的に出来事に対して「どう感じましたか?」と聞かれても、なかなか答えにくいものです。しかし、何も感じていない人間はいません。何かは感じているはずです。身体に変化が起こっているはずです。
感情に気づくというのは、まずは自分の身体に目を向けることから始まります。
それを無理に言語かしようとしても、あてはまる言葉がないかもしれません。それで構いません。
他者とのコミュニケーションと平行して自分の身体の感覚にも意識が向けられるようになれば、自ずと自分の感情に気づくことができるようになるはずです。
●気づいた感情をこどもの理解につなげる
人間は他者の感情に共鳴する生き物です。私が感じていることはあなたも感じているかもしれないと考えるのは、あながち間違いではありません。
ただし当然その精度をあげていくためには、他者と気持ちや考えを共有しコミュニケーションしていく必要があります。
こどもの場合も同じです、私たちが焦っているとき、怒っているとき、不安なとき、こどもが焦っていたり、怒っていたり、不安であったりするのかもしれません。もしかしたらこどもも同じ気持ちかもしれないという考えにたってこどもの様子をみてみると、また違ったものが見えてきます。
周りに気が散ってうろうろしているこどもは、どこか不安なのかもしれません。大人が嫌がることをする子は、大人に対して怒っているのかもしれません。もちろんそれは違うかもしれません。
だから私たちはコミュニケーションを続けます。その方法については、次からのノートで考えてみましょう。