子どもを取り巻く環境は家庭ごとに様々で、保育士として働いていると「これってもしかして虐待?」と疑いが上がる時もあるかもしれません。小さな子どもたちは自分が虐待にあっていると理解できていなかったり、言葉にして助けを求めることができないので、身近な人が気づいてあげなくてはいけません。家庭以外で子どもと接することの多い保育士として、児童虐待を見逃さないためにも見分ける方法を知っておきましょう。
目次
>児童虐待には色んなパターンがある
>児童虐待を見逃さないための見分け方
>児童虐待かもと感じた時の対応法
>まとめ
●児童虐待には色んなパターンがある
一言に「児童虐待」と言っても、いろんな行為があり、それぞれ身体的初見も変わってきます。子どもの身に起きている事案がどういうものなのか把握するためにも、全ての虐待行為の内容を覚えておきましょう。
身体的虐待
子どもの体に外傷が生じる、または生じる恐れのある行為を行うことを「身体的虐待」と呼びます。熱湯をかける、首を絞める、殴る、蹴る、投げ飛ばす、異物を口に入れるなど子どもの命に関わる危険な行為です。
性的虐待
子どもにわいせつな行為をすること、させることを「性的虐待」と呼びます。一般的には表面化しにくい虐待ですが、幼いながらにも不快な気持ちを感じ大人になってからフラッシュバックする可能性が高いです。大人の性的行為を見せるのも性的虐待にあたります。
心理的虐待
子どもに激しい暴言を浴びせる、著しく拒絶的な対応をするなど子どもに心理的な外傷を与えるのが「心理的虐待」です。言葉で脅したり、大声で罵倒する、無視をする、自尊心を傷つける言動をするなど心を傷つけるような行為を複数回行います。きょうだい間で激しい差別を行うことも心理的虐待にあたります。
ネグレクト
子どもに食事を与えない、または十分な量を与えない、長時間一人で放置するなど、心身の成長を妨げるような保護者としての監護を著しく怠ることを「ネグレクト」と呼びます。必要な治療を受けさせない、着替えをせず長時間不潔のまま放置するという命に関わる状況も出てきます。また、保護者以外の同居人による身体的虐待や心理的虐待を放置することもネグレクトにあたります。
●児童虐待を見逃さないための見分け方
子どもの健康的な成長を守るため、命を守るためにも児童虐待は絶対に見逃してはいけません。家庭内で起こることが多い児童虐待は、家庭以外の場所として身近な保育園で見つかることもあります。見分け方をしっかり把握しておくことが大切です。
身体的虐待の見分け方
子どもは遊んでいるうちに知らず知らずに青タンを作ったりと、怪我がつきものです。そのため、朝の受け入れの時点で「子どもの身体チェック」を必ず行いましょう。前日になかったような傷や怪我があれば「どこかにぶつけました?」と保護者に聞きます。後々、園で怪我をしたとトラブルにならないためにも忘れず行ってください。
園ではオムツ替えや排泄時、着替えの時など体の傷を見つけることができる時間があります。
遊んでいる時など不慮の事故によって起きる外傷は基本的に骨張っているところが多く、額・鼻・顎・肘・膝・太ももなどに起こりやすいです。その反面、児童虐待による外傷は臀部や太ももの裏・首・脇の下・外陰部などに起こりやすいと言われています。外傷の位置や回数など不審に感じたら身体的虐待を疑いましょう。
性的虐待の見分け方
子どもの性的虐待は表面化しにくいので、他の虐待に比べ日常の中で気づくきっかけが極端に少ないです。また、子どもが性的な行為を理解しておらず「何か変かもしれない」と思っても言い出せないことが多いのが現状です。
年齢不相応な性的な言葉を発したり、性的行為を子どもが行う場合は、子ども自身が同じことをされている可能性も高いので注意しましょう。
近年、家庭内だけでなく保育士が園児に対して性的虐待を行うというニュースも残念ながら増えてきました。このような場合は子ども自身がある程度会話ができ、ポツリといった言葉で発覚することが多いので、子どもの言動には注意をしていくのが大事です。
心理的虐待の見分け方
心理的虐待を受けている子は、大きな音や耳慣れない音に対して過度に反応する一面が見られます。また、おねしょが頻繁に起きたり人や物に対して攻撃的なことをするという点も見分け方のポイントになります。以前とは違う面が見られたら「何かあったかも?」と気にかけておきましょう。
また、子どもが保護者と接している様子をしっかり観察することも大切です。変に萎縮していたり、大人の機嫌を取ろうとしている場面が増えたら注意しましょう。
ネグレクトの見分け方
子どもの衣類が連日替えられていなかったり、清潔を保てていない様子が見られたらネグレクトを疑います。乳児の場合は、オムツ替えが長時間されずお尻が荒れてしまっているのに、処置がされていないという時に気づきやすいです。
また、過度に食事に対して執着したり、特別な病気等がないのに身長体重が増えていない場合も注意してください。ネグレクトは「子どもを放置する」虐待なので、身体の清潔さや食事の場面を気にかけることが大事です。
●児童虐待かもと感じたときの対応法
児童虐待のパターンと見分け方をお話ししてきましたが「これって児童虐待に当てはまる」と感じたら、どう対応していくのが良いのか不安になりますよね。まず第一に気づいたらどうすべきか知っておきましょう。
職員間で情報を共有する
なんらかのポイントで児童虐待かもしれないと感じたら、自分だけで悩まず同じクラスの保育士や園長など職員間で情報を共有します。どの点が児童虐待と感じるのか、身体的虐待の初見があれば記録を取ったり、子どもの言動を書面に残します。複数の職員で確認し合うことが大切です。
自治体の相談窓口や児童相談所に通告する
子どもの児童虐待を疑われる場合、発見した人は「通告する義務」があります。本当に児童虐待かわからないと通告して良いのか不安になりますが、法律では児童虐待を受けているかもしれないという時点でも通告して良いということになっています。
通告したことが保護者にわかってしまうのでは?と感じると思いますが「通告・相談は匿名でも行うことができ、通告・相談した人、その内容に関する秘密は守られます」と厚生労働省の児童相談所全国共通ダイヤルについてというページに記されているので、安心してください。
子どもの心身の安全を守るため、早めに自治体の相談窓口や児童相談所に通告しましょう。
●まとめ
児童虐待のパターンや見分け方、実際に疑われる場合の対応法をお話ししてきました。保育士として働く以上、虐待を見逃さないよう常に目を光らせなくてはいけません。表面化しやすい身体的虐待やネグレクトだけでなく、性的虐待や心理的虐待も「あれ?いつもと違うかも?」というちょっとした変化で気づくこともあります。
見分け方をしっかり理解し、子どものSOSにいち早く対応できるようにしましょう。