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【臨床心理士講座】感情を伝える〜感情の使い方〜

保育士のような仕事は感情労働と呼ぶことがあります。感情が動かされやすく、精神的に疲弊しやすくなります。単に感情的になりやすいだけでなく、保育の現場ではその自分の感情を上手くこどもに伝えることも必要になります。このノートでは、感情をこどもに伝えるときのポイントをまとめています。

感情的になっているとき

 感情的になっているときは、どうしてもその感情が態度になって現れてしまいます。以前のノートで、自分自身の感情に関心を向けて気づくこと、気づいた感情を味わうこと、その結果生じたこどもへの態度・関係を味わうことをまとめてきました。

 感情を自分で受け入れることができたら、自然とその感情が落ち着きます。落ち着いた状態で自分の気持ちをこどもに伝えることができたら、こどもは感情のコントロールの仕方や表現の仕方を学ぶことができます

否定的な感情を伝えるときの注意点

 こどもの言動で否定的な感情的になったとしても、仕返しになってはいけません。それから、自分の感情を理解してもらおうとしてもいけません
感情を理解してもらおうとすると、私たちはこどもの行動をコントロールしようとしてしまいます。結局それは、自分の感情に対する不安の裏返しです。

 感情をこどもに伝えるのは、こどもの行動を規制するためではなく、むしろその感情を伝える大人自身の行動規範をこどもに伝えるためです。

 「それは嫌だなあ。それはせんといて」とはっきり言うことで、自分がそれ以上は受け入れられないことをこどもに伝えます。こどもは私たちがそれ以上は譲らないことを、私たちの感情から察します。
このとき、私たちはこどもに仕返しはしないので、必要以上のことはしません。こどもは、大人が仕返しをしてこないので、大人が抱えられる行動の範囲内で安心して過ごすことができます

泣く子どもと親

仕返しをしてしまったとき

 どんな人間でも失敗します。感情的になっているときは、なおさらです。言いすぎてしまったり、不必要な罰を与えてしまったりしてしまいます。
そんなとき、重要なのは素直に謝ることです。とても難しいことですが、弱さを受け入れる強さが必要です。

 「ごめん。さっきイライラして言いすぎてしまったね」と伝えます。

 このとき忘れてならないのは、こどもも大人も、間違いがあったとしても、ダメな人間ではないということです。私たちは支え合うと同時に少なからず傷つけ合いながら成長していきます。こどもも大人も他者を通して自分を見つめ成長していきます。